朝貢とは何か~中国人の内ゲバ防止に役立つ外国人




岡田英弘著『この厄介な国、中国』(WAC BUNKO)より


そもそも、中国では人間関係は常に流動的であり、絶えずそのメンバーは抗争を続けている。どんな最高権力者であっても、信頼できるのは自分の身内くらいしかいないのである。(そうはいっても、前述の通り、妻も本当のところは信頼できないのだが--)。

だから、中国における最高権力者の政権基盤というのは、案外脆弱なものである。合従連衡の微妙なバランスの上に成り立っている。そこで最高権力者がしばしば用いたのが、外交なのである。
つまり、内部からのサポートは期待できないから、利害関係のない外部からのモラル・サポート(精神的援助)を得ようというわけである。

中国人というのは、あれだけ内部で抗争を繰り広げているのに、外部からの声には意外に弱い。というより、内部の声だけでは収拾がつかないので、外部の手助けを求めているというのが実態に近いかもしれない。

中国人の面白いのは、中国人だけの学会や会議で会っても、必ず一人は外国人を出席させる。それは何故かと言えば、中国人だけで話し合っていては、みんなが自分の利害に従って勝手な主張を始めるため、会議の席順一つ決まらないからである。

『醜い中国人』を書いたポーヤンは、日本人と中国人を比較して、次のように書いている。

「日本人は、一人づつ見ると、まるで一匹のブタのようだ。しかし、三人の日本人が一緒になると、まさに一匹の竜になる。日本人の団結精神が、日本を向かうところ敵無しにした。戦争をしたら、中国人は日本人に勝てない。商売をしても、日本人には勝てない。(中略)
中国人は、一人づつ見ると、一匹の竜のようだ。中国人は一人なら、その場所が、研究室にしろ、試験場にしろ、とにかく人間関係を必要としない状況ならば、非常にすばらしい仕事をすることができる。しかし、三人の中国人が一緒になると、つまり三匹の竜が一緒になると、たちまち一匹の豚、いや一匹の虫、いや一匹の虫にさえも及ばなくなる。なぜなら中国人の最も得意なのは、派閥争いと内ゲバだから……」

まさにこの通りで、会議の席順を決めるのでさえ、中国人が三人集まれば、それを内ゲバの材料にしてしまう。そこで、外国人にお出まし頂いて、裁定を下してもらう。そうすると、それまで罵り合いをしていた中国人が、実におとなしくそれに従うのである。

この中国人の性質を最大限に利用したのが、歴代皇帝が行った朝貢使節の謁見である。つまり、国内だけではまとまらないから、皇帝は外国人を味方に付けたがる。そうすると、家臣たちは「ハハーッ」とかしこまるのである。朝貢は、従来、中国の「属国」がその服従を誓うために行うものと説明されてきた。しかし、それは見当違いである。

そもそも、諸外国が中国皇帝に朝貢するのは自らの意思ではない。皇帝の出先機関が、ひとつ朝貢してくれませんかと頼み込むからである。だから、朝貢使節団の滞在費は全て皇帝の出費となる。

第一、朝貢というのは外交関係とは異質なもので、皇帝と外国の代表者の間の単なる個人的な関係の表現にすぎない。だからこそ、国の代表者が代替わりするごとに、「私の代になりましても、友好を継続いたしたいと存じます」と言って、その関係を更新する必要があった。国と国との関係ならば、一度友好関係を結べば更新の必要などないはずである。

だから、朝貢はあくまでも皇帝個人のために行われていたものである。

朝貢の使節が中国の都に入城するとなると中国兵が前後を護衛し、楽隊も賑やかに都大路を練り歩く。そうやって一大ページェントを繰り広げることによって、黒山の見物人に、皇帝の徳がいかに遠方にまで及んでいるかを印象づけるのである。

朝貢の「朝」とは朝廷で朝礼に出席すること。「貢」とは手土産を持っていくことを意味している。だが、その手土産は目立つもの、つまり特産品であれば、ほとんど価値の無いようなものでもかまわなかった。また、朝貢は外国使節に限った言葉ではなく、地方長官が皇帝に謁見するのも、朝貢と呼ばれた。

朝貢は言ってみれば「なれあい」であって、「お前たち中国人はどう思っているか知らないけれど、外国人はわしを最高権力者と認めておるんだぞ」ということを知らしめるための、国内向けの宣伝としてわざわざ演出されたものだった。だから、これを外交と考えてはいけない。

この伝統は言うまでもなく、今日の中国に受け継がれている。その端的な例が、鄧小平が権力を回復するためにアメリカとの関係をフルに利用した事実である。

現在でも中国政府は、「偉大的領袖」に敬意を表しに来てくれる人々には最大限のもてなしをしてくれる。飛行機代は払ってくれるし、ホテル代も出してくれる。もちろんご馳走もしてくれる。そのうえ、日当までくれる。つまりこれが、中国の人民に対して、彼らの指導者の権威を証明してくれるお礼である。

つまり、皇帝にせよ北京の共産党政権にせよ、それほどまでに、絶えず外国からの承認があるということを、庶民に宣伝しつづけなければならない宿命にあるわけである。


スポンサーサイト

テーマ : 季節の行事とイベント
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ソクラテス太郎

Author:ソクラテス太郎
アテナイ人諸君、こういう噂を撒きちらした、こういう連中がつまりわたしを訴えている手ごわい連中なのです。
そして、その連中というのは、嫉妬にかられて、中傷のために、諸君をあざむくような話をしていたわけなのであって、かれらのうちには、自分でもすっかりそう信じこんで、それを他人に説いているような者もあるわけなのですが、いずれもみな厄介至極な連中なのです。

http://twilog.org/nomorepropagand

人気ブログランキングへ

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
リンク
相互リンク歓迎いたします。左翼の方も大歓迎です。
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR