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エマニュエル・トッド 歴史人口学者・家族人類学者--もし自由貿易が続くなら民主主義は消えるだろう

7年前のベストセラー『帝国以後』で米国凋落を予測。最新著作『デモクラシー以後』では、グローバル経済下の金融危機を乗り切るには、自由貿易から保護主義への移行が必要と訴える。フランス気鋭の人類学者エマニュエル・トッド氏に危機の「出口」について聞いた。

--『デモクラシー以後』の中で、経済危機と民主主義の後退・崩落の元凶は、「自由貿易の絶対視」にあると指摘しています。日本では同意しにくい面もありますが……。

まず自由主義を古典的・伝統的な自由主義と、「ウルトラ・リベラリズム」に区別して考えなければなりません。前者は許容できるもので、かつ必要な自由主義とは個人だけでなく、地方自治体や国家など個人を超えたものも大切にするものです。

私にとって聖なる自由主義は、ある程度国家の規制の下に成り立つ経済です。これに対して最近の自由主義はウルトラ・リベラリズムと呼べるもので、常軌を逸した自由主義。これが問題です。個人が一番で、国家は存在しない。そこには市場しかない、といった自由主義なのです。

第2次世界大戦後に機能した自由主義は、まず共産主義(旧ソ連)との闘争があった。その結果、この自由主義は社会的な役割を担わされ、国家による介入もあった。この伝統的な自由主義は、特に日本においてよく機能した。日本では資本家による自由主義経済が有効に機能し、それはウルトラ・リベラリズムの対極に位置する理性的な自由主義です。

--現状の経済危機を克服するには一定期間の保護貿易主義(以下、保護主義)移行が必要で、保護主義の目標を「給与の再上昇の条件を作り出すこと」と主張されています。

欧州にとって、技術的に保護主義の処方箋を受け入れるのは極めて容易です。中国など給与の低い国からの製品輸入を関税などで制限すれば、欧州における労働者の給与は再び上昇し、結果的にそれが世界的な需要の喚起にもつながるのです。

 保護主義の目指すところは経済活動を再浮揚させることです。保護貿易主義化が進めば輸入を再び拡大させることができる、それが保護主義のパラドックスです。過度の自由貿易は貿易を崩壊させてしまう。今回、世界規模の経済危機を引き起こしてしまったことは、その象徴です。

だが、多くの人は自由貿易と保護主義の違いを誤解しているようです。保護主義者は貿易に反対しているというわけではないのです。むしろ、具体的な状況から適切な貿易を作り出そうと試みるプラグマティックな人々なのです。それぞれの利益を調整しながら、前向きに解決しようと考える人たちなのです。

一方、自由貿易の絶対視は一つのイデオロギー。それは、「何もしなければすべてうまくいく、規制の存在しない市場がすばらしい」という考え方です。ただ、すべての国が保護主義的な政策を採用すべきだと主張しているわけではありません。欧州の解決策にはプラグマティックなアプローチとして、保護主義が必要。それには世界各国間での協調体制が前提です。

--保護主義というと、国や地域間で「対立のカベ」ができるような印象がありますが、協調的な保護主義とはどのような意味ですか。

現在の自由貿易とは何かという点から話しましょう。自由貿易という言葉はとても美しいが、今の自由貿易の真実は経済戦争です。あらゆる経済領域での衝突です。安い商品を作り、給与を押し下げ、国家間での絶え間ない競争をもたらします。

一方、協調的な保護主義は話し合いです。協調的な保護主義の下では、政府がいかに需要を浮揚させるかが優先課題。保護主義の目的は内需の再拡大にあり、各国の利害が内需の刺激策に結び付いています。保護主義経済圏を形成することが(安い生産コストの商品輸入を抑制させ)給与水準の上昇につながる。

 世界中の指導者が「自由貿易は問題だ」と認識し、協調という考え方のメカニズムに理解を示せば、国家間の利害は一致するはず。各国が考え、熟慮し、話し合う。それが協調的という意味です。

WTO(世界貿易機関)にしても、その目的は、単に自由貿易の促進を図ることであってはなりません。話し合いの場であり、需要を喚起するために世界経済を小さくブロック化し、再セグメント化する場なのです。もちろん交渉は、力関係に左右されます。欧州は、中国に対欧輸出の抑制を求め、内需拡大に力を注ぐように求めます。米国に対しては貿易収支の均衡を要求するでしょう。

--民主主義の崩落危機を止めるには保護主義が必要だとの見解は、経済学者とは異なる、歴史学者としての考察から導いた論だと……。

エコノミストの問題点は、歴史を理解していないことです。イギリスの歴史家のケインズは「歴史家に経済を理解させるのは、エコノミストに歴史を理解させるよりもたやすい」と述べています。エコノミストが考えているのは一時的な世界。歴史家は事象の連続性を考察します。

市場の開放性、自由貿易市場は第2次世界大戦後、特に1950年から70年にかけて進みました。そのときは問題なかったのですが、最後に否定的な側面が現れてきた。それを問題にしているのです。

政治的な自由主義と経済的な保護主義の併存、それはフランスの第3共和制下で見られました。米国政府で自由貿易を憲法に明記していたのは、南北戦争時の南部の政府だけです。自由貿易は歴史的に見ると、逆に権威主義的な不平等の時代に結び付いているのです。

保護主義の世界では、民主主義システムの政権担当者は、生活水準と中産階級が大変重要だと考えます。一方、現在の民主主義の危機は自由貿易の危機です。エリートは人々の生活水準に関心を持とうとしません。現在の民主主義は、ウルトラ・リベラルな民主主義であり、エリートが人々の生活水準の低下をもたらしているように見えます。

 フランスは英米と並び、民主主義発祥の国です。しかし今や、支配者階級は自由貿易以外の体制を検討することを拒んでいます。不平等が広がるにつれて、多くの人々の生活水準は下がり始めています。もし、支配者階級が生活水準の低下を促し続けるなら、民主主義は政治的にも経済的にも生き残れない。独裁国家になるのは避けられないでしょう。

--「デモクラシー以後」に待ち構えている世界は。

かつて、旧ソ連の崩壊を予言したところ、実際に崩壊しました。アメリカ帝国主義も予言どおり崩壊するでしょう。今回は条件付きですが、最新著作の中では「もし自由貿易が続くなら、民主主義がなくなるでしょう」と指摘しています。

つまり、民主主義を残したいなら、自由貿易を片付けなければならない、という選択が必要なのです。デモクラシー以後に自由貿易体制の流動化が起きれば、民主主義が残るのです。逆に、自由貿易体制が不平等の度合いを強めたとしたら、民主主義は安定を失います。

欧州にはもはや、「左寄り」政党がありません。フランスの社会党には統治する気がうせてしまいました。右寄りの政党は社会主義者をリクルートしています。ドイツではSPDとCDU、つまり右翼政党と左翼政党が連立政権を樹立しました。仏独ではもう、政権交代の可能性はなくなったのです。政治的・経済的に変化をもたらさない社会が、民主主義といえるのでしょうか。

--ピッツバーグで開かれたG20では、各国の財務相や中央銀行総裁から経常収支の不均衡是正へ自国通貨安を容認するような発言が相次ぎました。こうした動きはまさに保護主義といえるのではないですか。

そのとおり。為替変動を利用して自国経済を守ろうというものです。通貨安はプロテクターになる。しかし一方で、為替の変動は壊滅的な状況ももたらします。他国の通貨高につながるからです。通貨価値の調整を通じて不均衡を是正できると考えるのは幻想です。というのは、通貨価値の下落に伴う影響にはバラツキが生じるからです。ある製品には輸入増の歯止めになるが、別の製品に対してはむしろ輸入を促すかもしれない。通貨によるコントロールができるなどと思わないことです。通貨は強いほうが良い。それが理にかなった考えではないでしょうか。

(聞き手:鈴木雅幸、松崎泰弘 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

Emmanuel Todd
1951年生まれ。フランス国立人口統計学研究所に所属。ケンブリッジ大学卒業。76年の『最後の転落』でソ連崩壊の予兆を断言、9・11同時テロから1年後の2002年には『帝国以後』で、帝国化した米国金融主義の没落を予言した。『デモクラシー以後』では、フランスのサルコジ大統領を批判、「サルコジ局面」の打破に向けた民主主義体制への警告の書でもある。

http://toyokeizai.net/articles/-/3267/
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テーマ : 博物学・自然・生き物
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