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不戦条約について 「世界がさばく東京裁判」より

不戦条約(1928年)は、パリ条約またはケロッグ=ブリアン協定とも呼ぶ。



佐藤和男監修「世界がさばく東京裁判」p172より

この不戦条約の批准に際して、各国の政治家たちが最も不安を感じたのが、この条約によって、自国が行なう正当な戦争を他国から「侵攻戦争だ」と非難されるのではないかということであった。このため、本条約の起草者である米国務長官ケロッグは自国の議員を説得する必要を感じ、1928年(昭和3年)4月28日、アメリカ議会で次のような演説をした。


アメリカの作成した不戦条約案中には、自衛権を制限乃至毀損するが如き点は少しも存しない。 自衛権はすべての独立国に固有のものであり、又あらゆる条約に内在している。 各国家はいかなる場合においても、各条約の規定如何にかゝわらず、攻撃もしくは侵略から自国の領土を防衛する自由をもち、自衛のために戦争に訴うる必要があるかどうかは、その国のみがこれを決定し得るのである。 正当な理由ある場合には、世界はむしろこれを賞讃し、これを非難しないであろう。
( 日本外交学会編『 太平洋戦争原因論 』 p.491 )

不戦条約には「国家の政策の手段としての戦争の放棄」を謳っているが、自衛のためならば戦争に訴えても構わないし、その必要があるかどうかもその国の判断に任されている。だから、心配は無用である、こうケロッグ国務長官はアメリカの議員たちに訴えたのである。
 このケロッグ長官の演説は国内向けのレトリックではない。 ほぼ同じ趣旨の公文を1928年6月23日付で、アメリカ政府は日本を含む関係諸国に送達している。その中に次の言葉がある。

不戦条約のアメリカ案中のいかなる規定も、自衛権をいささかも制限または毀損するものではない。自衛権は、あらゆる主権国家に固有なものであり、あらゆる条約中に暗黙裡に含まれている。各国は、いかなる場合にも、条約規定とは関係なく、自国の領域を攻撃または侵入から防衛する自由を有し、かつ自国のみが、事態が自衛のため戦争に訴えることを必要とするか否かにつき決定する権限を有する。
( 『 各法領域における戦後改革 』 p.79 )

 平たく言えば、アメリカ政府は、自国が行なった戦争が自衛戦争か否かは自国で決定することができるとの留保付で「不戦条約」を批准することを各国に求めたのである。この解釈に従えば、自らが「侵攻戦争だ」と宣言しない限り(そんな自国に不利になるようなことをするわけがないが)、国際法上、自らの起こした戦争を他国から「侵攻」だと批判されることはないことになる。
 なお、日本政府は1928年7月20日付のアメリカ代理公使宛の覚書の中で、不戦条約に対する日本の解釈がアメリカ政府のそれと同一であることを明らかにしている。
 また、この「不戦条約」の原加盟国であるイギリス政府も、批准にあたって次のような留保条件をつけることを宣言した。

 世界には、その福祉と保全とがわが国の平和と安全のために特別かつ死活的な利益を構成する諸地域がある。イギリス政府は、このような地域への干渉が行われてはならないことを明らかにしようと、過去において努力してきた。このような地域を攻撃から守ることは、イギリスにとり自衛措置である。イギリス政府は、新条約はこの点に関する行動の自由をそこなわないという明確な了解のもとに、新条約を受諾するものであることが、明瞭に理解されなければならない。
( 『 各法領域における戦後改革 』 p.80 )

 当時、イギリスは世界中に植民地をもっていたが、その植民地(法的には自国領土の一部)防衛だけでなく、「わが国の平和と安全のために特別かつ死活的な利益を構成する諸地域」 ― これは直接的には先ずエジプトのスエズ運河の権益を念頭に置いたものと理解されているが ― を守ることも自衛権の行使とすることを世界各国は了解してほしいと述べたわけである。
 この留保条件によって、不戦条約が認めた「自衛戦争」は自国の領域の防衛に限定されないと解釈されることになった。そこで当時の日本政府は、イギリスにとってのスエズ運河と同じく、日本にとって死活的な利益を構成する地域である「満洲その他の地域における権益保護」のために実力を行使することも「自衛」の一環であるとの解釈を採用したのである。

 アメリカ政府は、自衛の問題の決定を、いかなる裁判所であれ、それに委ねることを決して承認しないであろう。 また(他国政府も)この点については同様に承認しないであろう。
( 『 各法領域における戦後改革 』 p.79 )

と述べ、交戦国の双方がともに「これは我が国にとっては自衛戦争であり、侵攻(侵略)したのは相手国だ」と主張した場合は、自衛か侵攻かの認定の問題は「裁判に付し得ない」(injusticiable)法的状況にあることを認めたのである。

こうした各国の留保条件を丹念に検討し、東京裁判で高柳賢三弁護人は、不戦条約の締結国の意思を次のように簡潔にまとめている。

(1)本条約は、自衛行為を排除しないこと。
(2)自衛は、領土防衛に限られないこと。
(3)自衛は、各国が自国の国防または国家に危険を及ぼす可能性ある如き事態を防止するため、その必要と信ずる処置をとる権利を包含すること。
(4)自衛措置をとる国が、それが自衛なりや否やの問題の唯一の判定権者であること。
(5)自衛の問題の決定は、いかなる裁判所にも委ねられ得ないこと。
(6)いかなる国家も、他国の行為が自国に対する攻撃とならざる限り、該行為に関する自衛問題の決定には関与すべからざること。

(『太平洋戦争原因論』p.492)

以上

東京裁判におけるパリ不戦条約の適用/柴田徳文
https://kiss.kokushikan.ac.jp/pages/contents/0/data/003328/0000/registFile/0916_7420_023.024_03.pdf
こちらの論文ではケロッグ国務長官が不戦条約を審議した上院にて「自衛権は米国領土内に限らない」と答弁していることが触れられています。
『御説の通り。自衛権は、たとえば、合衆国本土内の領土に限るものではない。自衛とは、当政府が米国の防衛のためとか、米国を危殆に瀕せしめる虞のある事態を防止するために、必要だと信ずるような手段を執る権利を意味するものである。』


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アテナイ人諸君、こういう噂を撒きちらした、こういう連中がつまりわたしを訴えている手ごわい連中なのです。
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