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「消費税増税しても税収は減る」は都市伝説だと言い張る土居丈朗

増税でも税収増達成、ついに崩れた都市伝説 土居 丈朗 :慶應義塾大学 経済学部教授
土居 丈朗

『1997年度以降税収が減っていたのは、国税の収入である。地方税収はそうではない。しかし、それには極めて明白な原因がある。1998年度と1999年度には、法人税率が引き下げられ、所得税も特別減税が行われた。これなら、税収は減って当たり前である。さらに、小泉内閣期に行われた国と地方の税財政改革である「三位一体改革」では、国のひも付き補助金を削減するのと同時に、国税を地方税に移し替える「税源移譲」が約3兆円行われた。』

1998年と99年に法人税率が引き下げられたんだから国税収入が減るのは当たり前だ、1997年の消費税増税は関係ない、と仰っておられます。
税目別税収推移
法人税はこちらのグラフの通り、2002年度(平成14年度)で底を打ったときの10兆円から2006年度(平成18年度)の約15兆円まで税収増が続き、法人税率を下げる前の1997年度(平成9年度)の法人税収を一時的に超えました。
法人税率推移
このとおり、法人税収の増減は、税率よりも企業収益の増減に大きく影響を受けます。
所得税の特別減税(1999年)についても、その前年の1998年度(平成10年度)の所得税の税収は下がっています。
民間給与の推移
1998年(平成10年)から民間の平均給与が低下し始めたから所得税の税収が低下したのです。
民間の給与が低下したのは消費税増税と公共事業費削減が原因です。

「これなら、税収は減って当たり前である。」と言っている点からすると、法人税と所得税の減税による税収減が、消費税増税による税収増を打ち消してあまりあった、と認めているわけですが、それならば、消費税増税をするよりも、法人税減税と所得税減税をやらないほうが税収の増加が見込めた、ということになるわけですが、そういうことには考えが及ばないようです。

増税による実体経済への悪影響、とくに不況下での消費税増税の消費削減効果を甘く見すぎるからこのようなおかしなことを言い張るのです。
リカードの中立命題が彼の頭脳を汚染しているのでしょう。
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緊縮財政派の誤謬 ~ アルベルト・アレシナ

『さっさと不況を終わらせろ』では、ハーバード大学の経済学者であるアルベルト・アレシナの緊縮財政に対する考え方を痛烈に批判した。
アレシナの結論は、大規模な赤字を削減しようとした様々な国家を調査した結果、その行動自体が強い安心効果を生み出し、そうした効果がとても強いために、緊縮財政が経済拡張をもたらす、という驚くべきものだ。
1998年に発表されたその論文は当時、それほど注目されてはいなかったが、その後状況は一変した。景気刺激策と緊縮財政のバランスをどう取るのか、という論点は経済学者が論じる主要なテーマとなり、緊縮主義者にとってアレシナの論文は錦の御旗となった。
これはとても残念なことだった。なぜなら、その統計的な結論や歴史的な事象を詳細に分析したとき、彼の論文は全く検証に耐えられるようなものではなかったからだ。
アレシナの主張には二種類の根拠がある。その一つは経済的なケーススタディだが、近年の経済状況に当てはまらないものが多い。もう一つの回帰分析も、緊縮政策として取り上げる事例が実際の政策と一致していないという欠陥がある。
たとえば1990年末、アメリカは財政赤字から財政黒字へと移行したが、この動きは好景気に連動していた。果たしてそれは、緊縮財政の強化を証明するものになるだろうか。
当時の好景気と赤字削減はITバブルのせいで生じていたのだ。それが株価の高騰を導き、税収増を成し遂げたにもかかわらず、「緊縮財政が赤字削減を減少させた」と結論づけるのは間違いだ。財政赤字と経済の強さに相関関係があるからといって、緊縮財政が経済成長をもたらすという因果関係が必ず存在する、ということにはならない。

以上、ポール・クルーグマン「そして日本経済が世界の希望になる」p.118より

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緊縮財政派のウソ ~ 野田毅 「富の再配分、やっている」

財務省のポチ、野田毅税制調査会長が読売新聞のインタビューに応じて、ピケティによる批判に反論しました。
読売新聞20150208
読売新聞2015.02.08

日本の経営者の報酬は欧米とは違う、と言っていますが、それは日本企業の慣習の影響が大きいのであって、政治家が自慢げに言えるようなものではありません。
また、日本の消費税は用途を社会保障に限定している、と述べていますが、消費税は一般財源ですから消費税による税収分を何に使おうが自由なのです。逆に言えば、社会保障に使っているとも言えますし、官僚の人件費に使っているとも言えるのです。
家計にたとえれば、お父さんのお小遣いの減額分を子供の教育費に充てる、と説明しておきながら、教育費を増額せずにお母さんのへそくりに充てたようなものです。(ここでは財務省をお母さんにたとえています)

社会保障にしか使わないというのなら、目的税化するべきなのですが、財務省にはそんな気は最初からないのです。
ようするに詭弁ですね。
エリート集団による傲りなのか、バカな国民には嘘をついてもかまわない、とでも考えているのでしょう。

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伊藤元重と大竹文雄のトマ・ピケティ批判が低レベルすぎる

話題のベストセラーに批判的な視点を持つのはなんら間違っていませんが、どうも主流派経済学者の批判には違和感を感じます。

伊藤元重
「ただ、ピケティ氏が強調するのは、親が金持ちだと資産が子供に受け継がれ、一生安泰だという欧州型の格差だ。努力すれば報われる可能性が高い日本やアメリカでは、格差は経済の成長過程で広がると考えられる」


アメリカの格差を「努力すれば報われる可能性が高い」と評価する伊藤氏の認識に違和感を覚えます。
伊藤氏は、スティーブ・ジョブスやザッカーバーグのような十万人に一人の成功者がでることを指してこのように述べているのでしょうか?
そういう視点なら、孫正義や三木谷のような成功者を出している日本も「努力すれば報われる可能性が高い」わけです。
しかし、その成功の犠牲になった数え切れない人々をどう考えているのでしょうか?
日本は比較的マシですが、アメリカでの経済学(主流派経済学)を今以上に日本で政策に反映すると、かならず日本もアメリカのような格差社会になっていくのです。

伊藤元重
「しかし、世界的な資産課税の強化も難しい」


難しいからどうだというのでしょうか?
ワシントンコンセンサスはそんなに難しかったのでしょうか?
伊藤氏は、難しいが賛成する?それとも、難しいから反対する?どちらなのでしょうか?
「クライアント」の不利益になるからやはり反対するのでしょうか?

伊藤元重
「金持ちも貧しい人も、等しく課税される消費税のような考えを世界は模索しており、ピケティ氏の考えは逆行的だ」


逆行的だからなんだというのでしょうか?
だからこそ伊藤氏が言う「世界」というエリート層の政治に違和感を持つ人々に支持されて世界的なベストセラーになっているのではないでしょうか?

大竹文雄
「ただ、歴史的に資本の収益率が成長率を上回っているからといって、今後も格差が拡大していくという考え方は若干、無理がある」


レーガノミクスやサッチャリズム、ワシントンコンセンサスによって今の状況を招いているのですから、この路線を続ければ「今後も格差が拡大していく」と考えるのが自然だと思いますが?

大竹文雄
「日本が米英並みの格差社会に向かう可能性は低いだろう」


すくなくとも今の流れを変えなければ、米英並みの格差社会に近づいていくことは避けられないでしょう。

たったこれだけの紙面では難しい面もあるでしょうが、この二人の経済学者は、そもそも現状認識からまちがっているような気がします。
むしろこの二人が批判しているからこそ、ピケティの方向性は正しいのだ、と思えてしまいます。
特定勢力の代理人と化したエリートが今の格差をもたらしたのだと思えてなりません。

ピケティ
「安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、格差を拡大する一方で、経済は低成長になるという最悪の事態に陥るリスクがある。金融緩和は資産のバブルを生むだけだ。取り組むべきは賃上げの強化だ。」


読売新聞2015.2.3
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テーマ : 研究者の生活
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財務省のポチ 井堀利宏東大教授

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プロフィール

ソクラテス太郎

Author:ソクラテス太郎
アテナイ人諸君、こういう噂を撒きちらした、こういう連中がつまりわたしを訴えている手ごわい連中なのです。
そして、その連中というのは、嫉妬にかられて、中傷のために、諸君をあざむくような話をしていたわけなのであって、かれらのうちには、自分でもすっかりそう信じこんで、それを他人に説いているような者もあるわけなのですが、いずれもみな厄介至極な連中なのです。

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